藤下さんの「自転車生活」VOL.456

■  ついにロードレースにも黒船がやって来た!

いよいよ日本でもっとも認識されているツール・ド・フランスの開幕です。
8時間から9時間の時差があるので、ワールドカップ以来睡眠不足が続きますね。
自宅でケーブルテレビ、スマホ、パソコン、パッド、どのメディアで見ていますか?
今年のツールは、日本人の新城選手が出ないので、日本での視聴契約は減るでしょうね。
F1バブルだった頃、中嶋悟選手に始まり、鈴木亜久里選手、片山右京選手を始め、数々の日本人F1ドライバーがフル参戦した時代がありました。

F1シリーズ戦は地上波のフジテレビ系列で、ほとんど深夜に放送されていましたが、日本人選手が無事に走っていれば
そこそこの視聴率を稼いでいましたが、リタイヤすると寂しい数字になりました。
それはF1そのものの人気というよりナショナリズムが働いてのことだと思います。
その後、日本のF1バブルのはじけた時に登場した日本人ドライバーが活躍するも、ブームに再点火できず。
ビッグビジネスのF1に参戦したスーパーアグリに至っては
マシン供給先のホンダやドライバーの佐藤琢磨選手を巻き込んで、替えのカウリングもスペアパーツもないのに走るという
借金火だるまの状態で撤退というありさまでした。懐かしい話だなー。

ところで自転車レースはいつになったらメジャーになるのかな。
日本の競技団体が、先細り確実な補助金を消化する形でレースを運営してきた体質なので
「なんでロードレースを開催するのか」という哲学がなく、しかも広報活動に鈍い体質だからもうしばらくダメでしょうね。
ジロ・デ・イタリアもツール・ド・スイスも、日本で開催されたツアーオブジャパンも
開催されたのを知っているひとだけ知っているという感じで過ぎて行きました。
全日本選手権ロードレースだって、ツール・ド・北海道、どこでいつ開催されるのかの広報活動を目にしましたか?
ニュースや新聞で順位も紹介されないのが普通になっています。
やる気があればケイリン関係のスポンサードは大きいのだから、テレビや新聞のニュースコンテンツとしてプッシュできないわけがありません。

動画コンテンツのインターネットやケーブルTVやスマホのコンテンツ配信の世界の「黒船」と言われるダゾンという会社
資金力があって、可能性のありそうな世界のスポーツコンテンツの買い占めをやっています。
現在の配信の権利を持つ契約先から主催団体を切り離すために、高額で複数年の大型契約をしています。
権利を獲得して配信開始当初は赤字でも、近い将来は黒字化への光りが見えていると、積極的な先行投資を行っている勢いのある放映権ビジネス会社です。
日本のサッカー協会は、プロ化してJリーグ、J2、J3などのピラミッド構造で運営されていますが
Jリーグの全試合の放映権の複数年契約で、2000億円と言われる資金提供をうけて、地上波、BS、インターネットなど、独占放送の契約を結び話題になりました。

その契約金は資金繰りの厳しい傘下の各チームに分配されたり、強化費として使われることになっています。
福島のJビレッジも失いましたからね。
サッカーのナショナルトレーニングセンターとして強化拠点の再構築も必要でしょう。
その資金の中から更迭された前ナショナルチームの監督さんへの、違約金も大判ぶるまいされるとうわけです。

ダゾンは昨年、日本のプロ野球とも契約を交わしました。
プロ野球球団のオーナーが読売とか中日新聞とかのマスコミが含まれていて、少しやり取りが会ったみたいですが
野球の将来の発展を考えて、放映権料と引き換えに全球団と試合の動画配信の契約を結びました。
今後注目されるスポーツコンテンツは、バスケットボール、バトミントン、卓球、競泳などの
日本人が世界大会、大陸別選手権などで上位に入る可能性のあるスポーツや、注目度の高いコンテンツです。
自転車競技にも進出して、昨年は、急遽ジロ・デ・イタリアの放映権を獲得て配信したのを皮切りに
今年は60のロードレースの独占配信の権利を獲得したようです。
全日本選手権、ツール・ド・キナン、ツアーオブジャパン、さいたまクリテ、ツール・ド・北海道、ジャパンカップ、日本のロードレースに配信の価値が有るのか無いのかも気になります。

日本のスポーツコンテンツ配信会社は、30万人から40万人と言われるJリーグの試合や、15万人くらいのジロ・デ・イタリアの有料ユーザーを失い、会社の統合などによるスケールメリットを追求して、業界が再編されたり系列化してシェアの防衛態勢に入るでしょう。
国内のコシェアンテンツ配信会社の存続が危ぶまれるような、やられっ放しの状態です。
今後のツール・ド・フランスや、同じ運営団体が開催しているレースの放映権の確保も
ダゾンの資金力の大きさをバックボーンにしたアタック能力から考えて、キープするのはかなり厳しい状態なんじゃないかな〜。

ヨーロッパや北米や香港などに拠点を置く、世界的なネットワークを持つ放映権ビジネス会社は
すでにスポーツコンテンツだけでなく、映画界、ゲーム界、各国のキー局レベルのテレビ局などを巻き込む形で動き始めています。
アメリカ、中国、インド、フランス、日本など、各国の映画界が製作した映画の独占的なインターネット配信、DVD化、テレビ放映、キャラクターグッズ販売製作などの権利を獲得して、吹き替えや翻訳しての配信ビジネスだけが資金調達ではなくなって、権利ビジネスがグローバル化、巨大化しています。

1つの例としては、ワールドワイドの配信ビジネス会社や巨大広告代理店がジョイントして
映画のシリーズの映画館での上映開始に合わせて、テレビ局のゴールデンタイムでの前作の放映による
新作のプロモーション活動などもプロデュースして、コンテンツの広報活動にも力を発揮して
コンテンツの市場価値を総合的に高めて、放映権料だけでなく、周辺事業も含めた映画製作資金の回収に貢献します。

配信ビジネス会社は、テレビ局や番組制作会社が製作しているテレビ番組のコンテンツ獲得にも動いているし
もっとコンテンツ作りにも深くコミットして、番組製作能力あるキー局クラスのテレビ局とジョイントする形で
テレビ局の営業規模の数倍と言われる番組制作費を投資して、グローバル配信を意識した番組作りで、世界配信で資金回収するビジネスを展開しています。

魅力ある優秀なテレビ番組は、アニメや映画やドラマなど、製作した国で放映されるだけでなく
資金力とネットワークを持つ放映権ビジネス会社を経由して、各国のテレビ局やCATVへ配信されることで
民放テレビ局や番組制作会社の資金獲得に貢献して、地上波ジタルやBSの番組みスポンサー頼りだけでない、グローバルな資金調達の可能な営業形態となります。
もちろんNHK の地上波デジタルの各局や、BS・NHKやNHKエンタープライズなどの番組み制作会社が製作する
民放では考えられない制作費と、製作期間のかかった番組も、ワールドワイドで高く評価される可能性がある、有力なコンテンツとみなされています。

 

広告費は広告する製品にマッチした消費者のターゲットが限定されて、反応があったり売り上げに直結する場所へ資金投入されるようになって
細分化されて、キー局やネットワークの視聴者というぼんやりしたユーザーを対象にしたテレビ広告の魅力が低下しています。
巨大広告代理店が獲得してくる、広告スポンサー頼りだったテレビ局や制作会社、放映権ビジネスが大きく変わろうとしています。
まあ、気軽にロードレースや世界選やピストのワールドカップが見れるようになって、解説者が育って適確に解説してくれれば、それでいいんだけどね。
ではでは。 

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